専門医による医療解説


高齢者の健康法

井上病院 院長 森 雅信

  • 高齢者と言えば、何歳からなのでしょうか?体力、知力的には人それぞれ?
  • 国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上とされています。日本でも一般には、65歳以上とされているように思いますが、医学の領域では70歳、75歳、あるいは80歳以上としている論文もあります。
  • 社会の高齢化に伴い、井上病院でも肺がん、胃がん、大腸がんなどで80歳をこえるような高齢者の手術が増えています。先日も90歳をこえる人のがん手術がありました。術後の回復に若い人よりはやや時間がかかりましたが、元気に退院して行かれました。
  • 年を取ってくればくるほど、いつまでも若くいたいという気持ちが強くなってきます。認知機能の低下や、運動機能の衰え、記憶力の減退を少しでも遅らせるために、日本医師会から高齢者の健康法として、「一読・十笑・百吸・千字・万歩」が提唱されていますので少し説明を加えて紹介します。
  • 私自身も、今になってこうしておけば良かった、ああしておけば良かったと思うことがしばしばです。高齢者だけでなく、是非若い人も参考にして下さい。


  • 「一読」一日に一度はまとまった文章を読もう
    新聞でも雑誌でも本でも、好きなものを選んで読みましょう。たとえば新聞の社説を読むと、意識的に活字を追いかけ、その意味するところを頭にいれようとします。そうすると脳の多くの場所が活動して、思考や記憶を担う脳の前頭前野も活発になり、認知機能のアップに役立ちます。

  • 「十笑」一日に十回くらいは笑おう
    笑うという行為は、耳にしたことを一瞬にして理解することが必要なので、実は高度な認知機能を要します。笑う頻度が少ない人ほど認知機能が低下するリスクが大きいとされています。また笑うことで免疫力が向上し、がんの予防・進展を抑える効果や気持ちが前向きになる効果があります。

  • 「百吸」一日に百回くらい深呼吸をしよう
    (一度には十回くらい)
    意識して深呼吸をすることで、神経の高ぶりが治まり、脈拍は遅くなり、血圧は下がり、筋肉の緊張が和らぎます。自律神経が安定し、ストレス解消にも役立ちます。また深呼吸により動脈血の中の酸素が増え、体の働きが活発になります。

  • 「千字」一日に千字くらいは文字を書こう
    文字を書くことで、脳を刺激することにつながります。考えることで右脳を、書くことで左脳を、手を動かすことで触覚を、見ることで視覚を使います。日記をつける、手紙を書く、メモをとるなど、「書くこと」で認知機能を高めましょう。特に漢字を使って書くことをお勧めします。

  • 「万歩」一日に一万歩を目指して歩こう
    足は第二の心臓とも言われ、歩くことで下肢にたまっている血液が心臓に戻りやすくなります。また、歩くときに骨に加重がかかるため、骨粗しょう症の予防にもなります。さらにストレス解消、メタボリック症候群の予防と治療、脳の血液循環を良くするなど、さまざまな健康効果があります。日常的に歩く習慣をつけることが大切です。


  • 今日から「一読・十笑・百吸・千字・万歩」をはじめましょう!