専門医による医療解説


胆石症について

井上病院 院長 森 雅信

  • 腹部の最も一般的な病気のひとつである胆石症についての話です。
  • 胆石症の一般的な症状は突然の右上腹部痛ですが、最近は症状のない胆石症が増えています。2013年に発刊された科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆のう炎診療ガイドラインの中で、日本人の胆石保有率は厚生省(当時)医療統計局の国民生活基礎調査から1979年には390万人でしたが年々増加し、1993年には1000万人を超えたとされています。近年では一般人口の約10%が胆石を保有していると推定されています。
  • 日本では、集団検診や人間ドックが普及していて検査を受ける機会が多く、また当院では、肺の精密検査目的のCT検査や腹部の超音波検査などで、おなかの症状がなくても偶然発見される胆石症が増加しています。
  • 胆汁は食事で摂取した脂肪などの消化、吸収を助ける消化液ですが、肝臓で作られ、それが胆管を通して十二指腸に流れ出します。胆管の途中に胆のうがあり、食事をすると胆のうが収縮して胆汁を十二指腸に押し出します。
  • 一般に胆石症というと胆のうにできる胆のう結石症の事をいいます。石ができる場所によって他に胆管結石症などがあります。胆石の種類は大きく分けて2種類あり、コレステロール系結石と色素結石(ビリルビンカルシウム結石、黒色石)です。最近は食生活の欧米化に伴いコレステロール系結石といわれる石が多くなっています。
  • さて、胆石が偶然見つかったらどうすればいいのでしょうか?胆石が自然に消失してしまうことは稀ですが、無症状のまま経過する場合と、慢性胆のう炎を起こしたり、胆石が胆のうの出口に引っかかって急性胆のう炎を起こしたりする場合があります。
  • 無症状胆石の自然経過を検討した論文によると、1年間に無症状患者の1~2%、軽度の症状がある患者の1~3%に、重篤な症状や急性胆のう炎等の合併症の発症を認め、その危険性は胆石が発見されてから最初の数年に高く、その後減少するといわれています。さらに、胆石が複数個の場合は1個の場合と比較して何らかの症状を起こしてくる率が高いようです。いろいろな報告をまとめると無症状の胆石保有者が、何らかの症状を呈し、胆のう摘出術を要するリスクは概ね20%~40%、年率1~数%といえます。
  • すなわち、胆石保有者が無症状のままであれば、特別な理由がない限り胆のう摘出術を行う必要はなく、症状や合併症を生じたときに手術を行えば問題ないと考えられます。ただ慢性的なお腹の不調を胃腸の症状と決めつけてしまっている人も時々見かけますので、偶然見つかった胆石のある人はなんとなくお腹の調子がおかしい、なんとなく食欲がない等の軽度の症状が胆石の症状の事もあり、一度は専門医に相談してみる事をお勧めします。
  • 当院は肺の専門病院であり、学会が認める肺の専門医も3人いますが、お腹の専門病院でもあり、お腹の専門医も非常勤を含めて3人います。手術が必要な場合も、腹腔鏡下胆のう摘出術という従来の手術より負担の少ないカメラでの手術が普及していますので安心して御相談下さい。
  • まとめ:腹痛等の症状のある胆石症は手術をしないと“ダメなのですが、症状がなければ経過を見ればいいという事です。