専門医による医療解説

新型コロナウイルス感染症の後遺症
感染対策継続とワクチン接種の重要性

 

井上病院 院長 森 雅信

  • はじめに
    先日、福山市医師会・広島県医師会から、新型コロナウイルス感染症の後遺症についての小冊子が届きました。その一部をご紹介させていただきます。

    症状の多くは時間の経過とともに改善することが多いとされていますが、中には1年以上も続くことがあります。原因として身体的障害のほか、精神・心理的な要因が大きな割合を占めることもあります。

  • 代表的な症状
    一般的には、感染時に重症度が高い(中等症以上)人ほど後遺症に悩まされる傾向があるといわれていますが、軽症で済んだ人でもその後に後遺症が続く方も見られます。
    代表的な症状は下図の4種類に分類されます(図:千葉県印西市HPから引用)
  • 後遺症の具体例と対応・治療
    ① 咳・痰
    ウイルス感染に伴う肺の変化によって咳が長引く方がいます。レントゲンや CT 検査などで異常が見られない場合には精神・心理的要因が原因となっている可能性が考えられ、喉の詰まった感じや気管が狭くなったような感じがします。
    一般的な咳止めや去痰薬、喘息などに用いる吸入薬も有効です。抗不安作用を持つ半夏厚朴湯など漢方薬の併用も有効です。
  • ② 倦怠感、関節痛・筋肉痛
    少し動いただけでも疲れやすくなり、日常生活を送ることが困難になる人がいます。
    対応としては、まず十分な休息が必要です。症状緩和的に補中益気湯などの漢方薬や鎮痛剤などを服用し、抑うつ状態が見られる場合には、抗うつ薬を併用することもあります。
  • ③ 頭痛
    長引く頭痛の場合には脳 CT 検査や MRI 検査での確認が必要です。通常の鎮痛薬に加えて、片頭痛に対するお薬が有効な場合があります。また、強い肩こりのような頭痛を訴える方の場合には、筋緊張性頭痛が考えられ、筋肉の緊張を緩和するお薬が有効です。
  • ④ 不眠
    自宅療養や入院によって乱れた睡眠のリズムを正常化させることが重要です。どうしても眠れない場合
    には、短時間だけ副作用や依存性の少ない眠剤を服用することもあります。
  • ⑤ 嗅覚・味覚障害
    嗅覚・味覚障害自体は自然に回復することも多いのですが、経過によってはステロイド点鼻薬や漢方薬、亜鉛製剤の内服を行います。

  • ワクチンの後遺症予防効果・感染対策継続の重要性
    では、万が一新型コロナウイルスに感染した場合に備えて、重症化しないため、さらには後遺症に悩まされずに済むために皆さん自身ができることは何でしょうか。それは、積極的にワクチン接種を受けることです。第 8 波が近づいている中、現在はオミクロン株対応のワクチンが接種できるようになっています。

    徐々に行動制限が緩和されウィズコロナが進む中でも、「感染しないこと」、「重症化しないこと」に 加えて、「後遺症を残さないこと」も重要です。これまで通り3密を避け、屋内ではマスクを外す時間を なるべく短くするなどの基本的な感染対策の継続が重要です。

  • おわりに
    もし後遺症が疑われる場合には、早めにかかりつけの医師によく相談して、長引かせない様に適切な治療を受けましょう。

    井上病院では、新型コロナウイルスワクチン接種を今までも、そしてこれからも積極的に行っていきます。これまで、ワクチン接種予約電話(084-982-6600)にて予約を受け付けていましたが、混雑でつながらない場合があり、このほどネット予約サービスを始めました。24 時間対応ですので、ホームページにある予約サイトにアクセスしてください。詳しくは前述のお知らせをご参照ください。

    1日も早く感染が収束し、自由に外食や旅行ができる日がもどってくることを心から願っております。



    参考文献:知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症
    (福山市医師会・広島県医師会)