専門医による医療解説


気管支喘息

井上病院 理事長 井上文之

  • 近年、花粉症のようなアレルギー疾患が年々増えているように感じています。原因の一つに最近の生活環境のクリーン化が挙げられています。
  • 今から約50数年前、私が小学生の頃は多くの児童は蟯虫という寄生虫を持っていて、学校より定期的に検査を受け、陽性なら薬を飲まされていました。福山は片山病(日本住血吸虫症)という寄生虫で有名な所でしたが、今、寄生虫自体が少なくなり、大学に寄生虫学という教室さえなくなっています。
  • 寄生虫は人体に入ると自分が住みやすいように、人体の拒絶反応が起こりにくい物質を体内に放出しており、この物質によって他のアレルギー反応も抑制されていたのではないかと言われています。

  • 気管支喘息は、気管支が慢性炎症によって狭窄や過敏状態を起こし、発作性ないし持続性の呼吸困難や咳・痰を生じる病気です。その原因としてアレルギーが関与している事が多いと考えられています。
  • 気管支喘息の患者は気管支狭窄症状が主体の為、以前は気管支拡張療法が主体でありましたが、一時的に症状が改善しても、気管支粘膜で起こっている炎症は持続する為、発作を繰り返したり、薬が効かなくなったりする事がありました。
  • そこで、気管支で起こっている炎症を抑える副腎皮質ステロイドによる抗炎症療法が治療の主体となっています。ステロイドの吸入は気管支粘膜に直接作用する為、気管支粘膜に生じている炎症を効率よく抑える事ができます。
  • また、ステロイド薬を長期に内服・注射して場合には副作用を生じる可能性があるのですが、吸入薬は大部分が気管支・肺に留まり、血液中や他の臓器にはほとんど移行しないとされており、安全性が高く、長期使用に適しています。このステロイド吸入薬の普及に伴い、喘息患者の死亡数は著明に減少しました。
  • また、最近では、ステロイド薬と気管支拡張薬を両方配合した吸入薬も開発され、治療の有効性が向上しています。

  • 人々を笑わせ、考えさせてくれる研究に対して与えられる『イグ・ノーベル賞』は、ノーベル賞のパロディー版として知られる。本年(2015年)の医学賞は大阪府の開業医、木俣肇さんの『キスによるアレルギー反応の抑制効果』という研究が受賞しました。
  • 実験では、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎を患う被験者それぞれ数十人に、恋人や配偶者と30分間キスをしてもらい、その結果、キスの後はアレルギー反応を引き起こす原因となる抗体の産生や特定のタンパク質の血中レベルが低下し、症状が弱まった、と報告されています。
  • 将来、キスによって気管支喘息の治る日が来るのを夢見ています。