専門医による医療解説


肺のCT検査について

井上病院 診療放射線技師より

  • 検診などで「肺に影がある」「要精密検査」と言われたことはありませんか? 当院は呼吸器の病院として、紹介されて来院される方もおられます。その場合、患者さんの多くは胸部CT検査を行います。
  • 検診でのレントゲン検査は肺の炎症やがんの発見に役立ちます。平面のモノクロ画像であらわされますが、肺に重なる骨や皮ふ、肺の中の血管などの一部も白い影のように見えるため、病気による白い影かどうかの判断が難しい場合も多いです。そのような場合には精密検査を勧められます。
  • CT検査では、X線を使って体の断面の画像・立体的な画像を得ることができ、体内の様々な病気を発見できます。造影剤という薬を使う造影CT検査は、血管や病変をより鮮明に映し出すため、正確な診断が可能になります。
  • 当院での胸部CT検査の実際について
  • 現在、当院にて実用化されている装置は16列マルチスライスCTと呼ばれ、短時間で広範囲を撮影することができ、立体的な画像(3D画像)を容易に作成できるようになりました。その一方でCT検査に限らず、医療行為には必ずメリット・デメリットが生じます。
  • CT検査では、他の放射線検査では得られない詳細な形態画像を得ることが可能で、現在の画像診断の根幹を成す検査と言えます。しかし、他の放射線検査に比べると被ばく線量は高い部類に入ります
  • 放射線の影響は確定的影響と確率的影響に分類されます。確定的影響はしきい値を超えると統計的に急激に組織・臓器に障害が現れます。ですが、通常のCT検査の臓器線量は20~30mGy程度で、最も敏感な器官形成期の胎児奇形線量の100mGyを超えることはありません。
  • また確率的影響は全身に200mGyの被ばく(実行線量)を受けたとき発がん率が一定の割合で増加します。しかし、200mSv以下の人体への影響の定説はなく、通常のCT検査の実行線量は10mSv程度であり発がんの確率はあっても低いものと考えます。
  • しかし、CT検査が進化したからと言っても、むやみやたらに検査を行うことや撮影範囲も常に全身に至ることはありません。検査をオーダーする医師は診療上その検査が必要かどうか(正当化)の判断をし、診療放射線技師はより質の高い画像を提供する(最適化)ことを常に実行しています。基本的に健康被害をもたらす被ばく線量ではありませんが、不安なことや分からないことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
  • ※40歳を過ぎた方々は、胸部CTによる肺がん検診をお勧めします。当院では、1年間で5000件のCT撮影をしています。読影力に優れた医師が責任をもって、はい(肺)のたね(病気の芽)を摘んでくれることでしょう。