専門医による医療解説


間質性肺炎 Q&A

回答:井上病院 副院長 高橋正彦

  • はじめに:間質性肺炎は、診療中によく遭遇しますが、一般的にはまだよく知られていない疾患の一つで、肺炎と混同されていることもしばしばあります。診療中によく質問されたことに基づいて、間質性肺炎についてQ&A形式で解説します。間質性肺炎について少しでもご理解していただければ幸いです。
  • Q1:間質性肺炎と肺炎とはどう違うの?
  • A1:炎症が起きる場所が違います。肺炎は肺胞(=肺実質)の炎症であり、細菌やウイルスやマイコプラズマなどの微生物の感染や、食べ物や飲み物の誤嚥などにより起こります。間質性肺炎は肺の間質(肺胞と肺胞の間の組織)に起こる炎症です。【下図参照】
  • Q2:肺胞ってなに?間質ってなに?
  • A2:空気の通り道である気管支が肺の中で枝分かれしてだんだん細くなり、その先端に肺胞があります。肺はたくさんの肺胞でできています。肺胞は毛細血管に取り囲まれていて、肺胞壁を介して酸素を肺胞内から血管内に取り込み、二酸化炭素を血管内から肺胞内に排出しています。その肺胞と肺胞の間にある組織を間質と呼びます。また肺胞のことを肺実質という言い方もします。【下図参照】
  • Q3:間質に炎症が起きるとどうなるの?
  • A3:肺胞壁が厚く硬くなり、酸素や二酸化炭素が肺胞壁を通過しにくくなります。その状態を拡散障害と言います。その結果、息切れなどの症状が出ます。【下図参照】
  • Q4:間質性肺炎の原因は?
  • A4:薬剤、放射線、粉塵の吸入、膠原病によるものなど、原因が明らかなものもありますが、原因不明の特発性間質性肺炎もたくさんあります。
  • Q5:治療は?
  • A5:副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤などの薬剤により線維化が進行しないようにします。また息切れや呼吸困難に対して呼吸リハビリテーションや必要に応じて酸素療法を行います。急激に症状が悪化する急性増悪時にはステロイド大量療法、酸素吸入、人工呼吸器などが必要な場合があります。
  • Q6:線維化とはなに?
  • A6:炎症が起きて、治っていく修復過程において肺胞壁は厚く硬くなります。それが線維化です。肺が線維化した状態を肺線維症と呼びます。肺線維症の中には予後が非常に悪い特発性肺線維症も含まれています。【下図】
  • Q7:間質性肺炎、肺線維症は治るの?
  • A7:いいえ、治る病気ではありません。徐々に進行します。時に急激に悪化する急性増悪となります。定期的に診察や検査を受け、継続した治療が必要です。
  • Q8:いつ急性増悪するの?
  • A8:風邪やインフルエンザや肺炎などの感染症、治療薬剤の減量、抗癌剤治療、放射線治療、手術や侵襲のある検査処置などが誘因となります。誘因がなく急性増悪するものもあります。
  • Q9:間質性肺炎は肺癌と関係あるの?
  • A9:はい、関係あります。間質性肺炎は肺癌の合併が10~20%と言われています。
  • Q10:間質性肺炎で気を付けることは?
  • A10:定期的に診察や検査を行い、継続した治療を受けて下さい。また急性増悪を起こさないようにするために風邪やインフルエンザにかからないようにすること、罹ったときは早めの対処をすること、侵襲のある治療、検査、処置を受けるときは担当医とよく相談して慎重に行って下さい。
  • おわりに:間質性肺炎についていくらかご理解していただけましたでしょうか?何か気になることがありましたら外来受診して下さい。